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『泣いていいよ』って
私は今まで、
人の前で泣きそうな顔なんてした事なかった。
そんな姿さらしたくなかった。
…泣いたら…負けだと思った。
それでも
そんな仮面纏った私でも
―……高科先生の前では、
なんだか…
まるで自分じゃないみたいに…
『実験室』
閉めきられたカーテンで、
中は全く見えない。
ほんのり薬品の匂いと、
水の音―……
………。
来てしまった
また、来てしまった。
迷惑かな?
家で何度も考えた。
でもやっぱりこのタオルは直接返すべきだと、思う…んだよね。
…そんな、理由をつけて
私はここに来たかっただけなんだ
だから、加藤先生にも…
『朝』なんて言ったんだ
「汚い…自分………。」
小さく呟いた
自分のそんな汚い心を振り返ったら、扉はとてもじゃないけど開けられなくなった。
「おいで。」
―……とくん
「怯えないで、おいで。」
―……
私の中の何かが
変われるような、そんな気がしました。
高科先生…。
私は、貴方の傍に居てもいいですか?
貴方は…私を、まっすぐに見つめてくれますか?
私は…
少しばかり、
自惚れてもいいですか……?
扉を開けた
曇天の夕方
はじまりの雨音
*
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