理科教師(生物)

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「顔、上げて。」 「………。」 おそるおそる、 先生の目を見る。 「大丈夫だから。」 吸い込まれそうな目だった アロマディフューザーの霧が ほんのり先生をぼやけさせる いや、 私の視界がぼやけていたのは また、涙が出そうだったから。 ―…自分の事、 クラスメイトとの事、 優香の事。 少しづつ言葉(カタチ)にして はじめて気付いた 「辛い、んだな…。」 辛かった、 苦しかったんだ。 今までずっとカッコつけて 傷付いてないフリを繰り返していたんだ 悔しくて 苦しくて 「…辛、かった…。」 言葉にして はじめて認めた。 素直な自分を―…… 「…そっか…。」 するり、 白衣から伸びた白い指が 優しい手のひらが ふんわり私の頭を包んだ 「話してくれて、有難うな。」 胸が、きゅってなった。 「先、生…。」 「…なに?」 「聞いてくれて…有難うございました。」 「………。」 「今まで、私、 人に話した事……… いや…… 自分で自分に自分の気持ちを理解させる事すら、してなかったんです。」 「………そっか。」 「やっと、本当の自分が、少し理解できたような気がします…。」 「………良かった、な。        ………遥。」 とくんっっっ 「お前は、どうしたい?」 *
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