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「私、は―……」
先生が眼鏡を外す
薄くなっていく霧が
先生の目を
もっともっと輝かせる
「…クラスに、気が合う訳でもない友達をつくるつもりはないです。」
「…うん。」
「無理矢理友達をつくりたい訳じゃない、ただ…」
素直な、自分でいられる
「小さくてもいい、
私の居場所が、欲しい…。」
「見つけられるよ。」
「……え…?」
「お前が、クラスを…
クラスの奴を、素直な気持ちで見る事ができるようになった時―……
自分と一緒に居るべき相手が、はっきりと見えるよ。」
私は、変われるだろうか
あの教室で
綺麗な目で
クラスメイトを見ることができるだろうか
「その為には、しておかなきゃいけない事がある。」
「………?」
「優香、さんに…
ちゃんと自分の気持ちを話す事だ。」
「………優香…。」
そうつぶやいて
『ゆう、か………』
優香の顔を思い出して
『………ごめん―…っ』
いつも明るくて
面白くて、能天気で
そんな優香を
私は傷付け続けてきた
優香自身には何も告げずに
何も知らない優香を、
私が傷付けていたんだ。
―……
アロマディフューザーの霧が終わって
先生が電源を消す
―……向かい合っている私達の身体が
昨日より随分近くに感じた
『遥』
先生が、私の事をそう呼んだ。
あの声が、まだ頭に響いてる。
*
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