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…誰か、いるのかな。
静かな扉の向こうからは、煙の匂い。
まさか、何か燃えてるんじゃ…
ガララ
「……。」
「………。」
いた。
少し重たい瞼
夕焼けに光る白衣は、まるで羽根のようで。
少しくせのある髪がふわりと揺れる
「………。」
ぴしゃん
―……誰?
人がいた事にびっくりして思わず扉を閉じたけど
…ちゃんと確認できなかった。
あんな教師、いたっけ?
―……もう一度
跳ねる心音がそう促していた
けど
身体はそれを拒んで
『多分、理科の教師が何かの実験の予行練習でもしてるんだ。』
『邪魔しちゃいけないよ。』
『ほら、下校時間まであとちょっとしかないよ。』
『帰ろうよ。』
―……思えば、私はいつもこうだ。
何か新しい、いつもはしない事とか
今まで見たことなかったものとか
そんなのに出会うと、
深く追求したい
知りたいはずなのに
身体が
『律義』という名の言い訳でそれを拒む。
怖がり、なんだ。
―……靴を履いて、
誰もいない昇降口を抜ける。
広いグラウンドの真ん中に立ってみたけど
そこから見える日没の学校は
何も変わらず
音もなく静かに
私の帰りを促しているようにも感じた
*
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