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昨日と同じ、夕焼け。
昨日と同じ、におい。
―……昨日とは違う
違う、違いたい
変わりたい
変わりたいと願う、心音。
「…入って良いぞ。」
びくっっ
「―……失礼、します。」
なんで気付いたんだろう
カーテンの向こうに私が立ってるなんて
―…昨日も開けた、その扉が
昨日とは違う。
心臓が跳ねる
どきどきで、
胸が苦しくなった。
―……ガラ
「………。」
……5分
なんの会話もないまま、
ゆっくり時間が流れる。
私は入口近くに立ったままだったけど
その白衣の教師の
綺麗な手が
薬品や器具に触れる。
その動作を見ているだけで
その実験を見ているだけで
なんだか心が落ち着いた。
「………。」
突然、その教師が私を見て
がた、がたん
椅子をひとつ、下ろして
「………どう、ぞ。」
「ありがとう、ございます」
微妙な距離
少し香ったのは
煙草の匂い
……コポ、ポ
試験管に
綺麗な泡が浮かぶ
―……綺麗、だな……。
沈む夕日が
その白衣を
眩しく照らす
―……
お互いに、何も言わなかった。
言う必要が、なかったのかもしれない。
その二人は、
「運命」で
出会うべくして
出会ったのだから。
*
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