理科教師(科学)

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―…… 彼は 突然、私に こんな言葉をかけたのです 「………泣いて、いい。 誰も、見てないから。 思いっきり、泣けばいい。」 気の強い私が はじめて言われたその言葉が どれだけ どれだけ 嬉しかったか 今まで 誰に何を言われても 辛くないと自分に言い聞かせてた 辛くない自分でいたいと思ってた 泣かない自分をつくってた だから、かな 涙、止まらない。 ―…全然知らない人なのに 貴方から見ても 私は全然知らない人のはずなのに なんで、 貴方の言葉が こんなにも胸に染みたのか ―…… 子供の時以来だったと思う あんなに声を上げて、 泣いたのは。 ―…… 「岩崎さん、遅いなぁ…。」 岩崎さんの机に置かれた鞄 それにひらり触れた指が ほんのり熱くなった 「…遠い、な……。」 するり、撫でた。 「…僕には…届かないのかな。」 下校時間まで あと30分の、夕焼け。 ―…… 顔が、ぐしゃぐしゃになった。 「…ごめんなさい…。 すごい、泣いちゃっ、て。」 「……別に…。」 「………っ…。」 「………。」 何も言わない 何も言わないけど貴方は多分 一瞬で 私の全てを 読み取ったんですね 「………。」 そっと差し出された 緑のタオル …女子らしさなし、ハンカチを持っていない自分が、…少し、 恥ずかしくなりました。 *
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