相反

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「宗教?あんな非科学的なもの信じる奴の気がしれないね」 その青年は宗教学を学ぶ私を歯牙にもかけない様子で切り捨てた。 青年の名は高槻義行。有名大学の理学部で生物学を学んでいた。 「お前も宗教学なんて習わず科学を学ぼうぜ?そんな下らない学問なんかやめてさあ。世の中全て科学さ、科学こそ至高の学問なんだ」 高槻は私にそう言い放ち手をひらひらとさせ、私の反駁を無視し、笑いながら私の目の前から去っていった。 私はこの学問に少なからず誇りを持っていた。とは言え、何かの宗教に傾倒していたわけではない。ただ歴史と密着していた宗教に興味を抱いたからであった。だからこそこの高槻の言動は許せなかった。 この一件以来高槻とはすっかり疎遠になってしまった。 それから何年も経ち、。私は大学教授へ就任した。そう、彼の馬鹿にしていた宗教学でね。…まあ特に有名な存在という訳ではないが。 一方彼も大学教授になっていた。ただ私と違うのは色々なマスコミに反オカルトの急先鋒として出演していた。特にオカルト的な内容を教義に持つ新興宗教には強圧的な態度で批判を行い、宗教関連で何らかの被害に遭った人達を含め、次第にお茶の間に広く受け入れられる存在になっていた。 元々口も上手く、カリスマ性もあった彼に次第に人は集まり、反新興宗教の団体を立ち上げるに至った。 そんな彼をモニターの向こう側に見ながら、対岸の火事だと笑いながら私は研究に勤しむのであった。
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