相反

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団体が立ち上がった後、すさまじい速度でその活動は広がっていった。人々は、 「科学こそ総て」 という明朗な一言の元に、この世のオカルト的なものや宗教への弾圧を始めたのだ。 私もその対象となった。私自身は何の宗教を信じているわけではないが、宗教を研究しているということだけで非難囂々浴びることとなった。 家には落書きをされ誹謗中傷のビラが撒かれた。更には研究室から一人二人と学生が去って行く、そんな状況に私は耐えられなかった。 「もう限界だ…」 誰もいなくなり、書物も荒らされた研究室にて辞表をしたため、私は学長室へ向かった。学長は特に慰留もせず受理をした。理系とは違い功績も出しづらい文系。国からの補助金も出ず、更には宗教への強い風当たり。大学としてもお荷物だったのであろう。 学長室から家への帰り道、私は泣いた。胸にぽっかりと穴が空いたようだった。 電気屋の前を通り掛かると、テレビの中に批判を繰り広げる高槻がいた。 「お前が言っていたことが正しかったのかもな、高槻…」 私が苦笑いを浮かべそこを立ち去ろうとした時 【ニュース速報 全国の宗教施設にて生物テロと思われる事件発生】 私は目を疑った。そしてぽっかりと空いていた胸に嫌な予感が去来した。 急いで家に帰ると大惨事の様子が刻々と映し出されていた。ゲストで呼ばれたのであろう高槻は 「宗教は生物学の前では無力なんですよ」 と、したり顔で語った。それを見た瞬間私は確信した、高槻がやったと。 数週間後、警察は犯人を特定しある団体へ乗り込んだ。 やはり、高槻の団体であった。彼は逮捕され、その様子は大々的に中継。そしてその姿を宗教家達がこぞって批判をしていた。 その後、彼の団体は国会で破防法の適用を受け、諸外国でカルト宗教の指定を受けたのだ。 私は高槻と面会することにした。彼は勝ち誇った様子で面会場に現れた。が、団体がカルト宗教に指定されたことを知ると狼狽を始め叫んだ。 「俺の団体をそんな低俗な宗教と一緒にするな!科学こそ至高の存在なんだ!」 私はそれを聞いて話にならないと席を立ち背を向け、 「知ってるか、高槻。宗教はな…人文科学の一つなんだぞ」 Fin
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