#1 俺と一緒に死んでくれませんか?

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端から見たらデートの約束のように見えるだろう。 だが、これはあくまで"自殺"の約束のメールだ。 中途半端な気持ちで送った訳じゃない。 それでも言いようのない不安は消せなかった。 約束を明日に控えた夜、普段は気にも止めない母の写真に目が止まった。 (これで見るのは最後か。来世はこんな親不孝者を産まないといいな) ーー目を覚ますと午前2時を回っていた。 いけない、遅刻する!! 相手が来るなんて保証はない。それでも約束は約束。 来なかったら一人でも死ぬだけだ。 俺は車を飛ばした。 午前2時58分、なんとか間に合った。 俺はゆっくり車を降りる。 暗くて人影は見えなかったが風にたなびいている白い布はかすかに見えた。 ーー来てくれたんだな。 俺は声を掛けた。 『待ち合わせ‥ですか?』 女性『はい。あなたを待ってました。来てくれたんですね。』 彼女は今から死のうとしているには程遠い、それこそ『生きたい』とでも言うかのような笑顔でそう言った。 『約束ですからね。』 俺は目を見る事ができなかった。 可笑しかったのか彼女はまた、ふふっと笑いながら、 『良かったら少し話しませんか?あなたの話聞かせてください』 と言った。 あなたの話が聞きたい。そう言われたのは初めてだった。 俺は思いの丈をすべて打ち明けた。 誰からも必要とされない辛さ、孤独感、いっそ死んでしまった方がマシだ、と。 彼女は黙って聞いてくれた。 きっと自分が何を言っても、慰めにはならないと分かったんだろう。 俺が話し終えても、彼女は口を開かなかった。 『あなたはどうして死にたいと思ったんですか?』 俺も彼女に問いかけた。 彼女はゆっくりと話し始めた。
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