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「そうそう、アリシアだったね。君の学生の頃からの恋人なのだろう。いやぁ、いいよねぇ、愛は。私も妻が亡くなるまで妻を愛し続けた、もちろん今もね。その恋人が銃弾で貫かれたり剣で裂かれたりするのは君も望まないだろう。それに君が生きて帰れたのなら我々が君達の生涯を保証し全てを優遇してあげると言っているんだ。軍に戻すことも、階級も思いのままだよ。当然、他の選択肢もある、我々の保証で生涯遊んで暮らすことも可能だ。それならば恋人も喜ぶではないか?」
アリシアがそんな他人の血で汚く穢れた金で喜ぶものか、逆に俺は軽蔑されるだろう。
だが、事実上アリシアが人質にとられた事にかわりない。俺はこいつの言う戦争に行かなくては行けない。彼女は死ぬ運命ではないのだから。
「承諾した。俺はお前の言う戦争に行く。その代わりにアリシアには近づくな、もし近づいたら」
一拍おいて相手がオウム返しをする。
「――近づいたら?」
「お前を殺す」
すると相手は大笑いし始めた。
「あっはははははは、よい、その意気やよし!!私が老衰で死ぬ前に殺しにくるのもよかろうて。・・・・だが、生きて帰れたらの話だ小僧。今すぐに出発だ」
両脇を左右にいる看守に腕を組まれて無理矢理立たされ廊下に出た。
目隠しをされ囚人服のまま廊下を歩き、扉が開く音を聞き、通ると日差しが身体中に当たるのが分かった。
そして、バラバラ、とヘリコプターのプロペラが激しく回る音に近づいて行った。
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