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「ミハル!起きなさい、遅刻するわよ」
階段の下から母が呼ぶ声がする。
「…はぁい…起きた」
昨晩は早く寝たのに、まだ眠い。
春先は眠いっていうけど、どれだけ寝ても足りない気がする。
「ほら、早く食べちゃいなさい」
トーストとコーヒーが出された。
「ん…コーヒーだけでいいや」
「ちゃんと食べないとお昼までもたないぞ」
父がチャンネルを変えながらミハルに言う。
『…で、先日発見された男性の遺体は同じ市内に住む、町田透さん48才とみられています。
死因は鈍器のようなもので頭部を殴打されたことによる脳挫傷で、財布や携帯が残されているところから
警察は、怨恨と通り魔の両面から…………』
ガタン!
母がおもむろに立ち上がり、テレビの電源を切った。
「おい、今のニュース、見てたんだぞ!何するんだ!」
「こんな物騒なニュース、朝の時間に見たくないわ」
母の顔が青ざめて見えた。
「それでもいきなり消すことはないだろう!
もういい!出かける!」
鞄を持って立ち上がる父は苛立っている。
「あ、待って、私も行く」
そこに居づらくなったミハルも鞄を抱えた。
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