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人だかりは、まるく誰かを囲んでいた。
キャーキャー騒ぐわけでもなく、でも取り囲んだ女子たちは皆、同じ方向を向いている。
彼女たちの視線のその先には
それ以上、誰かが近づくのを拒絶するような圧倒的な威圧感にも似たオーラを放つ存在。
「うわ……綺麗…」
ミハルの手を引いていた由香がつぶやいた。
つられて、ミハルも見た、そのオーラを放つ一人の男を。
「……ホントだ」
亜麻色の長い髪、青く澄んだ瞳、透けるような肌、薄い唇には銀色のピアス。
真っ黒な細身のスーツ、ブーツと…あれは何ていうんだろう?
シルバーのチェーンやクロスがキラキラ光ってる。
背中に黒い小さな…翼?
「誰なんだろ?…」
視線はその男を見たまま、由香がミハルに聞いた。
「え?…知らない…」
男は塀にもたれ、軽く腕組みをしたまま辺りを囲む女子をぐるっと見渡した。
「あっ、こっち見た」
由香がつぶやいた。
男はこっちを見たまま、近づいてくる。
「え?」
ミハルの視線と男の視線が、ピタリと合った。
初対面なのに、そらしたくてもそらせない視線。
「…ミハル…だね。約束通り、君に会いにきたよ」
「だ…誰?…」
「冷たいなぁ、いいんだよ、忘れたふりなんかしなくても」
男はミハルの1メートル手前で立ち止まった。
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