~誘拐~

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あの日の事は 今でもしっかり覚えてる。 連日、天気がよくて― あの日も予報は晴れと言っていた通り 清々しい朝だった。 「霞美(カスミ)ちゃぁ~~~ん!」 家の玄関から 元気の良い声が響き渡る。 「霞美、早くしなさい!愛ちゃん迎えに来てくれたわよ!!」 お母さんの声が空かさず飛んでくる。 「はぁ~~い」 いつもの様に返事をしながらばたばたと準備をする。 ランドセルを掛けながら 「いってきます。」 と、玄関のドアを勢いよくあける。 「おはよー!愛ちゃん。」 「おはよぉ。」 なんでもない いつもの挨拶だか、正直 霞美には憂鬱であった。 それでも 笑顔を作り 一緒に登校していった。 毎日、会話はほぼ同じ。 クラスの目立つ男子の話や 先生の話。 学校までの距離は小学生の足で30分かからない程度。 小学生にしては 結構な距離である。 この辺りは まだ田舎で 大都会とは違うので 朝の登校時間だとしても 周りに人が沢山行き交う程ではない。
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