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懐かしい。
ものすごく懐かしい。
昔、学校帰りに、坂を下りながら偶然に見つけた小さな小さな公園。
そこまで行く坂道。
あの頃は、美佳先輩で頭がいっぱいだったのに、今日の俺は、それを思い出しもしない。
考えるのは、実習のことでもない。
里山春香とのあの頃の思い出。
たわいない話を聞いて笑いあった、たった一週間。
その一週間に救われた俺は、そのおかげで教師になろうと思ったと言っても過言ではない。
今も変わらない桜の木。
それを見て、一瞬だけ目を瞑り、深呼吸をした。
そのすぐ脇の灯籠の横。
石でできたベンチの上が俺の定位置だった。
そこに、当時と同じように、寝転がり神社の方へ首を向けた。
目を瞑ると、思い出す。あの人懐っこい笑顔。
「……あ」
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