理由

2/12

1397人が本棚に入れています
本棚に追加
/98ページ
懐かしい。 ものすごく懐かしい。 昔、学校帰りに、坂を下りながら偶然に見つけた小さな小さな公園。 そこまで行く坂道。 あの頃は、美佳先輩で頭がいっぱいだったのに、今日の俺は、それを思い出しもしない。 考えるのは、実習のことでもない。 里山春香とのあの頃の思い出。 たわいない話を聞いて笑いあった、たった一週間。 その一週間に救われた俺は、そのおかげで教師になろうと思ったと言っても過言ではない。 今も変わらない桜の木。 それを見て、一瞬だけ目を瞑り、深呼吸をした。 そのすぐ脇の灯籠の横。 石でできたベンチの上が俺の定位置だった。 そこに、当時と同じように、寝転がり神社の方へ首を向けた。 目を瞑ると、思い出す。あの人懐っこい笑顔。 「……あ」
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1397人が本棚に入れています
本棚に追加