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俯いた彼女がポツリポツリと話し始めた内容に驚愕した。
「私ね、小さい頃から、腎臓病なんだ。ちょっと無理しちゃったの。そしたら、入院」
「あ、でも、今は、前より入院しなくなったんだよ。人工透析してるから」
俯いた顔をあげた彼女は、笑顔なんだけど、俺の心は、ドカンと、鈍器で殴られたような衝撃をうけた。
「でね。退院して来てみたら、お兄ちゃんやっぱりもう居なくて。元気になったかなぁって心配してたんだぁ」
本当に彼女は、もう。
俺は、堪らなく抱きしめてあげたい衝動にかられるのを、必死で抑えていた。
自分の体のことよりも、ただ女にフラれて落ち込んでいただけの男を心配していたなんて。
どれだけ、心が綺麗なのだろう。
俺は、その時、どれだけ情けない姿を彼女に晒していたのだろう。
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