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俺は、それをごまかすように、立ち上がって、彼女を後ろから、そっと抱きしめた。
抱きしめていいのかと、緊張しながらも止められなかった。
「春香ちゃん、約束しようか?」
「え?」
「実習が終わったら、またここで話しをしよう。会わなかった間のこと、教えて」
「はい」
ヨシッと抱きしめていた腕をはなして、頭を撫でた。
ご両親に気を遣って、何も言えない優しい彼女。
イジメられていたことも、きっと言わないでいたのだろう。
イジメに耐える強い力を持った彼女。
そして、何より、俺の前では、素直でかわいい彼女。
守りたい。
守ってあげたい。
あの頃より大人になった俺は、この愛しさを、大切に育てたい。
振り向いてもらえるように――…。
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