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ここからでは、暗くなった今、彼女の顔が見えにくい。
「そっち、行っていい?」
「え?お兄ちゃんも願い事あるの?いいよ!一緒にお願いしようよ」
願い事か。
俺が願うとしたら、春香ちゃんと同じお願いだ。
恥ずかしくて、そんなこと言えやしないけど。
大人になった俺の体じゃ小さくて、足元が不安な階段をゆっくりと上ると、少し、涼しい風が通り過ぎた。
「願い事、もうしたの?」
「うん」
「そうか」
一人、満月を見上げていた彼女。
俺も、横に立ち、満月を見上げた。
「お兄ちゃんの願いごとは何?」
「言ったら、叶わないって教えてもらったからなぁ。どうしようかな」
これっぽっちも悩んでいないのに、悩んだフリをした俺に、狡いと連呼してきた彼女。
「そんなに知りたい?」
「うん」
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