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確かに、俺だけ知っていたらフェアじゃないか。
「どうしても知りたい?」
「うん」
「好きな子の望みが叶うように」
「……え?」
「その子の望みが叶ったら、俺に振り向いてくれますように」
見上げたまま、春香ちゃんを思って言った言葉。
伝わって欲しい。
伝わって欲しくない。
二つの気持ちが交錯する。
「お兄ちゃんの好きな子って、桜井先生の―――」
それ以上、聞きたくなくて、人差し指でシッと春香ちゃんの唇を押さえた。
「違うよ。もっと、可愛くて、純粋で、素直な子」
俺の言葉なんか聞こえていないかのように、春香ちゃんは、無言で、俺と同様に満月に目を向けた。
「ごめんな」
「……え?」
「生きるのに精一杯の女の子の隣りで、不謹慎な願い事だって思ったでしょ?」
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