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美佳先輩のことを言おうとしたから、俺の気持ちに気付いていないはずだ。
だとしたら、俺の願い事は、彼女にとったら贅沢なもの。
つい春香ちゃんを思ってという意図など、わからない彼女にしたら、つまらない願い事だ。
「ううん、素敵。お兄ちゃんの願い事、叶うといいね」
「だね」
本当にそう思うよ。
滑り台をスルスルと滑りおりた彼女は、
「今日は、透析の日なの。またね、先生」
と、俺に小さく手を振り、背中を向けた。
「おう。また明日。気をつけて行くんだぞ」
それに、返事をするように、彼女は、振り向かずバイバイをした。
彼女に、先生と呼ばれたことで、胸がざわついて仕方ない。
もし、俺が、春香ちゃんのことを願っていると言ったら、君は、お兄ちゃんと、言ったか?
そんな小さな期待を、彼女背中を見つめながらしていた。
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