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「お兄ちゃん、悲しいの?」
初めて、本気で惚れた女、美佳先輩が、卒業と同時に、好きな男のもとへ、行ってしまった。
それも、結婚という形で。
先輩の担任で、俺から見ても憧れる男のところへ。
俺は、偽善者。
先輩の恋を応援する、引き際のいい男をずっと、演じてきた。
だが、実際の俺は、そんな物分かりがよくない。
諦めなきゃと思えば思うほど、好きだと実感し、苦しくて、胸が痛い。
女々しい奴が、本当の俺。
「ねぇ、お兄ちゃんってば!」
ふと、そんな声で、隣を見れば、ランドセルを背負う女の子が立っていた。
「ん?どうかしたの?」
俺が聞けば、少女は首を横に振った。
「お兄ちゃん、悲しいの?」
「んー、そうだね。ちょっと、悲しいかな」
何も知らない少女だ。
少しくらい本音を言ってみよう。
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