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「あ、うん。頑張ってみる。あ、あの、お兄ちゃん、ま、また会える?」
言ったそばから、遠慮する彼女。
ずっと、こうして生活してきたから仕方ないかもしれないけれど。
「送ってく」
「ダメ。お兄ちゃん怒られちゃう。会えなくなっちゃう」
俺が、強攻しても、彼女は、ご両親と俺の間に挟まれて悩むだろう。
彼女の優しさが時として、影になることを初めて、この時に気がついた。
だからと言って、俺は、簡単に引き下がらない。
それは、前の美佳先輩を好きになった時に学んだこと。
引き下がっていたら、恋は、成就しないのだと。
「ちゃんと挨拶する。わかってもらうまで、何度でも言葉にするよ」
時に傷つけてしまうかもしれないけれど。
そう言った俺に、今までで見た中で一番の笑顔を俺に向けた彼女。
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