別れ

12/15
前へ
/98ページ
次へ
きっと、純粋に、春香ちゃんの成長を何年も見守り続けてきただけの男性。 それなのに、こんなに、ヤキモチ妬くなんて、どうかしている。 俺の知らない春香ちゃんを知っているんだとか、春香ちゃんと俺と同じように呼ぶんだとか。 挙げ句、俺が彼女のカレシじゃないのは事実なのに、カレシと言わないことに、胸が張り裂けそうになったなんて。 運命の人だって言われるだけで、いいじゃないか。 二人の会話に入れずに、頭を下げただけの惨めな自分を、自嘲した。 こんな、汚い気持ち。純粋な彼女にぶつけられないな。 「おじさん、いい人でしょ?時々、気にかけてくれる優しい人なんだ」 ベンチに戻る途中、ニッコリと微笑む彼女を見ると、今、嫉妬して、汚い気持ちでいたのに、それが、吹き飛んでいくから不思議だ。
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1397人が本棚に入れています
本棚に追加