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彼女がブツブツ言っている間に、俺もまた、一人、彼女を想像して、口許が緩んだ。
「どこに行きたい?」
出来るなら、彼女の望むところへ。
「あッ、水族館。私ね、初めてのデートは水族館に行きたいって前から決めてるの」
「よしっ。わかった。水族館に行こう!」
恋愛する資格すらないようなことを言っていた彼女が、ちゃんと、そんな淡い夢を抱いていてくれた。
やっぱり、普通の女の子じゃないか。
すごくかわいいじゃんか。
「よかった!夢がちゃんと叶って」
「うん、俺も嬉しいよ」
「絶対、叶わないと思ってたんだけどね」
「…………」
多分、いろんなことをそうやって諦めてきたんだね。
「春香ちゃん。いっぱい楽しもうね」
元気に言えたかな?
電話でよかった。
過去の彼女を思うと胸が痛んだ。
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