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「初デートの記念に」
俺がそう言うと、嬉しさを隠しきれない彼女の笑顔が、俺をドキッとさせた。
館内を出るまで二時間と経っていないし、半分もまわれていないが、満足げに微笑む彼女に、心臓ごと持っていかれた。
「次に来る時は、朝から来てゆっくりまわろう」
「うん!」
卒業後のあてのない約束でもいい。
もう一度来れるから、連れて来てやるから、
今日は、もう帰ろう。
「帰りは、少し道路が混むから、眠くなったら寝てもいいからね」
「ヤダ。せっかく一緒にいるのに、寝てたらもったいないもん。話したいよ」
助手席で、少し拗ねたような顔をして、俺を見ている。
だが、通常、ここまで出歩くことをしないことくらい俺もわかっているから、
「疲れているでしょ。だから、半分だけ話をして、残りは、寝てて!そのほうが安心するから」
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