⑥楽~ヘブン~園

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朝。 ある看護学校の廊下。 二人の女学生が笑いながら歩いていた。 反対側からもう一人の男の学生が歩いてくると、二人は駆け寄りこう尋ねた。 「ねぇねぇ、昨日あぶなかった患者どうなった?」 急にきかれ戸惑いながらその子は答えた。 「あ、はい。お亡くなりになりました」 「あー、やっぱりぃ。」 左側の女がでかい声をあげた。 「あちゃー」 右側の女も笑う。 「あたしたち、かけてたのよね。くたばったか生きてるか」 左の女が言った。 「あたし1000円まけちゃった」 右側の女が残念そうに言う。 どうやらいつもこうやって患者の容態でかけごとをしているらしい。 何も言えなくなる真面目な男の学生。 【あたしたちかけてたのよねー】 急に後ろから録音した様な声がながれてきた。 三人がその方を見ると、《是空》が小さなパソコンの様なものを持って立っていた。 まるで軍隊、コマンダーの様な格好だ。 ゼクウは言った。 「あんたたち人の命をなんだと思ってるんだ」 一瞬止まる三人。 「え、え、あの誰ですか?」 「その亡くなった患者さんの家族は今どんな気持ちで居ると思う?」 ゼクウは女の質問は無視して続けた。 「え、なんなのこの人」 「まじ、意味わかんなーい」 バカにする様に二人が言った。 男の学生はずっと黙って考え込んでいた。 「家族だけじゃない。その人の友達、趣味の仲間、仕事の同僚…」 ゼクウはそう言いながらせまってきた。 「え、なんなのマジ」 「てか、あんた誰?あんたになんでそんなこと言われなきゃいけないの?関係ないじゃんマジ」 怒り出す二人。 「そうか」 そう言うとゼクウは持っていたパソコンの様なもののボタンを押した。 その瞬間、学校中に二人のさっきの会話が流れ出し、学校中のパソコンに映像が流れ出した。 それを確認するとゼクウは二人の横を通り過ぎて歩いていった。 そして振り返ってパニック状態の二人にこう言った。 「おまえらに看護士の資格なんか無い」
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