プロローグ 焔~エンバン~晩

3/3
前へ
/118ページ
次へ
凄まじい勢いで噴射される炎。 パニックになるドライバー。 とにかく炎から逃れたい一心でハンドルをきるが、右の車線にずれた途端黒いトランザムは減速し左側に並んでいた。 運転席はフルスモークで中を見る事は出来ない。 そしてトランザムは大学生の車に体当たりし、そのまま右側のガードレールに押しつけ始めた。 衝撃音と共に舞い散る火花。 必死にハンドルを左にきろうとするが、圧倒的な力にびくともしない。 二台の車はT字路に近づいていた。 みるみるせまるT字路。 だが、ブレーキがきかない…。 「ううぉぉーっ!!」 キィィィィィー。 つっこむ寸前でトランザムは綺麗な弧を描いてドリフトしながら左へよけていった。 ほぼ一回転し、斜めから大学生の車を見つめる姿勢になる。 そして。 ドギュドハァーン!!! 大学生の車は開店前の新聞店につっこみ爆発・炎上した。 その炎の灯りをトランザムの開閉式のヘッドライトが、憐れむ様に見つめていた…。 一方病院のベッドにはあの少女の死体が横たわっていた。 少女の胸の上には少女が笑顔で母親に見せたであろう100点のテストがあった。 少女の横においてあるカルテにはきちんと死因までもが書かれていた。 -死因:人間の心が汚れた副作用- これが、後に日本中のお茶の間を騒がせることになる『TAGUi』の最初の事件だった。 誰もいないはずの病室で少女の亡骸を見つけた看護婦は驚いていた。 そして警察も驚いていた。 いや、一番驚いていたのはバイトに出ようとしたら新聞店が無くなっていた学生かもしれないし、もしかしたら、あなたかもしれない…。
/118ページ

最初のコメントを投稿しよう!

884人が本棚に入れています
本棚に追加