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基地に戻ってから、ユウはティアラを捜していた。
ユウがたずねて、ティアラが自分の部屋にいたためしがない。
ツンピーやシェオルにもきいたが、地下施設にいなければ、自分たちにもわからないとゆうことだった。
ユウが捜している頃、ティアラは基地の外にあるベンチにひとり座っていた。
座って空を見ていた。
空を見て泣いていた…。
涙があふれでて止まらなかった。
自分でもどうすることもできない。
心の奥底からとてつもなく深い悲しみがこみあげてきて、それが瞳に熱いものとなって溢れ出てくるのだ。
ティアラは正面の夕日を見た。
「ぐっ…」
声にならない声をあげて頭をもたげる。
右手こぶしをひたいにあてて。
『なんて赤いんだ…』
ぽたぽたと涙の雫が地面に落ちる。
夕日もティアラにはゆがんで見える。
「もう限界だよ」
ふと声がした。
だが、ティアラの他には誰もいない。
ティアラの中のティアラが話していた。
ふと顔をあげると目の前に銃をつきつける男がいた。
自分だった。
「いつまで続ける気だ?」
目つきの悪いそいつは言った。
「まだとり戻せるよ」
別のティアラが言った。
ティアラの左側にすわって、ささやく。
子供の様な優しい表情をしている。
「まだだ!!」
後ろのティアラが日本刀をぬいて言った。
「もっと憎め!おまえをさんざんもてあそんで使い捨てにした人間たちを!殺せ!!」
「殺して」
気がつくと誰もいなくなっていた。
ティアラは自分の左手首を見た。
左手首に赤くはしる一本の線。
「早く死にたい」
また声がした。
ティアラは限界だった。
想像を絶するむなしさと、やりきれなさと、悔しさの中で精神がちぎれかかっているのを、なんとか抑えていた。
いつも見渡すと前後左右に四人の自分がいて、みなティアラの頭に銃口をつきつけていた。
ティアラは立ち上がって言った。
「俺が死んだらすべてが終わる」
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