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ぐっすり眠ること4時間。
日の出が近い時間帯にさしかかったときだ。
統幕団のリーダーが倉庫に戻ってきた。
人の頭ほどの大きさの物が入った紙袋を持っている。
間違いなく、あれがビーナスの心臓だろう。
俺は「うらぁ」と叫び、倉庫の屋根から飛び降りた。
さすがに5メートルもの高さからジャンプしたために、足が砕けるような衝撃があった。
しかし、このデモンストレーションは無意味だったわけじゃない。
相手を威嚇するに十分な成果を上げた。
「どういうつもりだ」
聞くのは当然だろう。
俺は言い返した。
「奪い奪われが怪盗の不文律。お前は得意の手法でソレを盗み、俺は得意な手法でソレを奪う」
この時点で勝負が決した。
俺は怪盗だ。
当然、今のは脅し文句だ。
俺から暴力を振るう気はない。
つまり、足掻くか負けを認めるかを決めるのは相手なのだ。
この怪盗勝負は、現時点で終わった。
終わったはずの勝負なのだが、統幕団のリーダーは諦めなかった。
愚行だ。
ヤツは大声で、倉庫にいる仲間を呼んだ。
俺の背後に、倉庫から出てきた連中が並んだ。
総勢14か15。
手には鉄パイプやバール。
目つきは龍の義眼のようにギラギラしている。
ヤツらは怪盗のルールを破った。
仕向けたのは俺だが、ルールだけは守っている。
悪いのはヤツらだ。
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