3人が本棚に入れています
本棚に追加
誰もが乱闘を予想するだろう。
しかし、俺は違った。
乱闘という無謀な戦い(相手にとって無謀という意味だが)を回避させる手段を知っている。
先陣を切って突っ込んでくるバカを、ひたすら殴ればいいのだ。
頬骨を砕こうが顎を砕こうが、そんなことは関係ない。
ヤツらは頭数で多いぶん、心にオゴリがある。1人の仲間がなにされようが、様子見を口実に動こうとしない。
きっちり30発。
俺は馬乗りになって殴り続けた。
俺の上半身は、ヤツの返り血で真っ赤に染まった。
大事なのは血の量だ。
それが充分になるのが、ちょうど30発だった。
俺は、残ったヤツらを一睨みした。
それだけのことで、集団全員の戦闘意欲を削ぐことができる。
こうして俺は、ビーナスの心臓を手渡しで頂いた。
ビーナスの心臓と、これまたクソみたいなシルキーの情報を貰うまで、5時間弱も費やした。
夜明け前にビーナスの心臓を売り払うと、驚くような時給になった。
考えていた額の20倍だ。
なるほど、怪盗とは割の良い仕事のようだ。
さて、俺が入手したシルキーの情報を以下に箇条書きする。
1.シルキーは日本人
2.シルキーは20代の小娘
3.シルキーはモンブランが好物
4.シルキーは幾つもの顔を持っている
5.シルキーは左肩にバラの入れ墨をしている
寝床などの有力な情報が一切なかった。
バラの入れ墨にしても、あんなものはピンキリだ。
タトゥのように耳クソサイズもあれば、肩を覆い尽くす入れ墨まで考えられる。
幾つもの顔、という情報も気になったが、まずは20代の日本人を捜すことにした。
と、
その前に、統幕団のリーダーにも、俺のサインを書いてやった。
ヤツは嬉しさのあまり泣いて喜んだ。
最初のコメントを投稿しよう!