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喧嘩には2種類ある。
強者と弱者の闘いと、強者同士の闘いだ。
前者の場合、一発でカタがつくことが多い。
しかし、後者は違う。
互いに一歩も引かず、どちらかが倒れるまで殴り合うのだ。
俺は今、その殴り合いをしていた。
奴の拳が、俺の頬を強く打った。
この瞬間、俺の肺の中から大量の空気が飛び出た。
出たのなら、戻さなくてはならない。
しかし、悠長に息をしている時間はない。
7割程度の空気を吸い込み、残りの3割を犠牲にして殴り返す。
奴もまた、肺の空気を吐き出した。
俺と奴は、一切防御をしなかった。
これは、そういう勝負なのだ。
スタミナ、肺の強さを競う、技術を度外した根競べ。
楽しかった。
こんなにも楽しい殴り合いは、本当に久しい。
俺が奴の顔を殴れば、奴も俺の顔を殴った。
俺が奴の腹を叩けば、奴も俺の腹を叩いた。
蹴りのフェイントを入れて奴の顔を殴ると、奴は蹴りを放った。
フェイントを入れた俺に、奴はフェイントで返したのだ。
巧いフェイントだった。
それに、蹴り自体も強烈だ。
110キロを越す俺の体が横に飛ばされた。
距離ができた。
奴の青い目を睨むと、奴は俺が詰め寄るのを待っているようだった。
互いに、肩で息をしている。
インターバルを挟むには絶好の機会だ。
それに、俺は奴に興味を抱いていた。
どういう生き方をし、どのような過去を持ち、どんな哲学を抱いているのか。
酒でも飲めば、きっと俺と奴は意気投合するだろう。
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