3人が本棚に入れています
本棚に追加
おい、嘘だろ。
ボロアパートに帰ると、ドアの鍵が開いていた。
部屋の中は、言うまでもなく想像通りの光景だ。
久しぶりだった。
ここまで俺をバカにするヤツは、ここ数年はいなかった。
賞金稼ぎや用心棒をしていた時を一瞬で思い出させてくれた。
俺は、テーブルの上で面白い物を見つけた。
手紙だ。
『龍の義眼はもらった。怪盗シルキー』
怪盗のマナーとでも言うのだろうか。
こんなボロアパートに忍び込んで、よく鼻高々でいられるものだ。
きっと、シルキーとかいう怪盗は知らないのだろう。
まるで廃人しか住み着かなそうなこのボロアパートが、マルクス・ハントの家だということを。
俺は手紙を鷲掴みで取ると、無造作にポケットにしまった。
いいだろう。
カズトの遺品を取り返してやる。
それも、怪盗というスタイルで、だ。
相手が怪盗なら、俺も怪盗になってやる。
だが、一度でも相手が拳を振り上げれば、俺も容赦なく自分の拳を使う。
カズトが怪盗スタイルに拘ったように、俺もそれを真似してやる。
あいつにできて、俺にできないことなんてないんだ。
よく見てろよ、カズト。
俺はお前を越えてみせる。
最初のコメントを投稿しよう!