初仕事

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誰だって、肝臓を叩かれればゲロを吐く。 それが人間の構造、自然の摂理だ。 だが、ゲロより簡単に吐く物を知ってるか? 情報だ。 頭でも胴体でも、殴れば殴るだけ、人は情報を吐きたがる。 これも自然の摂理だ。 では、なぜいとも簡単に情報を吐くのか、教えてやろう。 俺が強いからだ。 俺は、怪盗に詳しいと評判の情報屋の脇腹を殴った。 生意気な口を効いたからだ。 ヤツは開口一番、幾ら払えるか、とほざきやがった。 その前は、俺の全身を眺め、鼻で笑いやがった。 だから、殴ってやった。 骨が折れる、あの独特の音がした。 懐かしい音だ。 情報屋は、一つの情報を吐いた。 怪盗シルキーが女だということだ。 そんなことは名前で分かってる。 俺はもう一発、今度は逆の肋骨も折ってやった。 すると、また一つ、情報を吐いた。 自分には、それなりのバックが付いている。 バックとは、尻拭いをする組織のことだ。 「それがどうした」 「ちょっと待て。あんた、見たことがあるぞ」 情報屋は俺の顔をまじまじと眺め、表情を歪めた。 「あんた、狂人ハントだろ。この街に戻っていたのか…」 どうやら俺を知っていたらしい。しかし、骨を2本も折られてから気付くとは、なんという間抜けな情報屋だ。 「ペンは持ってるか?」 俺が聞くと、情報屋は恐る恐るペンを取り出した。 俺に逆らってもいいことはないと本能で悟ったのだろう。 「なにをする気だ?」 情報屋の声は震えていた。 「サインしてやる」 「サインだと?」 情報屋の顔が一気に青ざめた。 俺がやろうとしていること以上に恐ろしいことを想像した顔だ。 俺は情報屋の服を引きちぎるように脱がし、その背中にペンを刺した。 情報屋が無様な悲鳴を上げる。 その声を聞きながら、ヤツの背中に俺の名前を彫ってやった。 そして、俺の名前の下に「シルキー」とも彫った。 このサインを見たヤツらは、俺とシルキーの名前をセットで覚えられる。 つまり、俺がシルキーを捜してることが一目瞭然だ。 情報屋にこれだけのことをしてやると、ヤツはなんでも話した。 しかし、俺の欲しい情報が出てこない。 誰々ならもっと詳しい、というレベルだ。 俺はその足で、情報屋に紹介されたヤツのところへ向かった。
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