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ポツリと優生の口からこぼれた言葉に、理緒はゆっくりと頷いた。
「何で…、何も悪い事はしていないのに…」
まだ真新しい木の床に目線を向け、悠はただ呆然と、声を震わせながら呟いた。
「俺はした覚えはない!」
呆然としていた悠の隣からひょこっと出てきたのは、癖毛を揺らしながら焦っている音夢だった。
呆然としている悠、焦らずに状況を整理し始める優生、相変わらずの顔をしている理緒以外に、誰もいないこの2-Cの教室で叫んだ音夢は、叫んだ後にこう言った。
「おい皆、どういう事か知らねーけど…、早く行こうぜ!」
その言葉に悠と優生は戸惑ったが、このままこの教室にいるのも、理事長の機嫌を損ねるだけなので、渋々理事長室に行くことにした。
しかし、のんびりゆっくりと歩いていたら、とてつもない時間がかかってしまう。
春花学園は、とんでもなく広いのだ。
なので理緒達4人は急いで、今まで理緒達がいた本館の教室とは別にある、別館にある理事長室へと向かう。
理事長室に呼ばれる生徒は大抵、赤点の事や悪事の事で説教され、停学や退学にさせられる。
実際にそうなった生徒を、悠や音夢、優生、理緒も見たことがあるので、事実なのだ。
何せ理事長関連の事について、良い噂なんて聞いたことが無い。
…そうして、とてつもなく広い校内を、しばらく走った後。
4人は息を切らしながらも、やっとの思いで理事長室に辿り着いた。
4人の先頭に立っていた優生は、ゆっくりと唾を飲み込み、深呼吸をして。
「失礼します」
大きなドアを二回叩き、優生達は恐る恐る理事長室に入っていった。
すると、ふんわりと甘い良い匂いが優生達を包んだ。
「…おぉ、来てくれたか」
理事長が足を組んで、香りの良い紅茶を手に持ち、座り心地の良さそうな大きなイスに座って待っていた。
しかも理事長の顔からして、とても機嫌が悪そうだった。
理事長に呼ばれるはずのない理緒達は、早くこの部屋から退出するため、理緒から素早く話を持ちかけた。
「それで理事長先生、いきなりどうなさったんですか?」
「あぁ、いきなり呼んですまないが…」
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