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「働きを期待しているからね」 お嬢様は左手を突き出し親指を突き立てている。 そして踵をかいしてアホ毛……いけないいけない、癖毛をひょこひょこ揺らしながらお部屋へ帰って行く。 その帰って行く足取りは寝ぼけており、見ていてハラハラする。 「階段気を付けて下さい」 おいらは注意を促したが階段以前の前にゴスッという音を響かせながらお嬢様が階段の手すりに激突していた。 おいらは呆れ顔をしたが一瞬で直す。 そう、この仮面はおいらの顔の動きに連動して口を開けたり頬が膨れたりと気味の悪い物なのだ。 勿論今回も然り、仮面が呆れ顔になるため表情がわかられてしまうのだ。 だがお嬢様は打ち所が悪かったのだろう、床にうずくまって蠢いていておいらの顔だなんて見る余裕もないようだ。 おいらは溜め息をついて殺虫剤をローブの内ポケットにしまい手袋を念入りに引っ張ってお嬢様救済に向かう。
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