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流石に泣くのは堪えた。 だがしかし、口からは無力感に襲われたため息が勝手に漏れる。 段々愚痴っぽくなる思考の暴走が止まらない。 面倒事は嫌いだ。 しかしそれなりに無害な生き物は好きだ。 単純な作業を毎日毎日続けるのも特に苦ではない。 人並みに責任感もある方…まあ、要は小心だから期待されたら裏切れない。 省みれば結構飼育委員の適性はあるが、いかんせん運動神経が残念だった。(どっかの同名の忍とは大違い。コンプレックスである。) 前室とウサギ部屋の間の壁が破られていたのが誰の責任かはともかく、直接的に兎を逃がしたのが運の尽き。 捕獲の全責任を担う羽目に。酷い話だ。 直線のわかり切った動線上、扉に立つ僕のすぐ横を擦り抜けて駆け去るリョーマ=サカモト(飼育対象のウサギ。牡。突っ込んではならない。)をてをこまねいて見送ったようなスピードスペックでどうして平面を自由に駆ける条件を手にしたそれを捕縛できるというのだろうか。 おめおめとリョーマを逃がしたかどで切腹…にはならないが飼育委員仲間の同情と援助は望めない。 というか、僕以外にリョーマがすぐに戻らなくても困る奴がいないのだ。 確かに、アイツなら野良でも生きてゆけるとは確信できる。
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