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小動物の癖に類稀な位庇護欲を刺激しないふてぶてしいウサギがリョーマである。
もともと、昔の校長だか(名付けもその人だと聞く)に押し付けられる形で飼われ始めた兎とそのための飼育委員は細々とした成果と評価に甘んじたものでしかない。
でかく、見るからに薄汚れたごわごわの剛毛をたたえ、コワオモテで愛嬌やサービス精神の希薄なアイツはイマイチ学生受けがよくなかったし、それなりに予算を喰うそうで教師受けは更に良くなかった。
飼育委員受けはもっと悪い。懐かないので世話のし甲斐がないとの理由だそうだ。
好き好んで束縛しておいてこの言い草。
時に動物好きの方が身勝手で残酷だと思った。
リョーマにしたって高校でまで愛玩動物を飼育する意味もないのに、ただ漫然と飼い殺しされるより広く自由な空の下自然の掟に挑みかかる方がいかほどにマシな兎生を送れることか…
わかっているよ、リョーマ=サカモト。英雄の名を持つ白ウサギよ。名前負け仲間。
僕はきみのそういうところが結構好きだった。
名前の壁に挑む妙にでかいきみの背中を敬意と友愛を篭めて押すことになんの異論もない。
しかしその挑戦………
僕の時計を返してから仕切直してくれまいか。
そろそろ闇が迫ってきた。あと数10分で土埃色の毛玉(もとは白)も帳に溶けてしまうだろう。
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