窓の外の景色

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外に出た途端、慶次が研究所の話を持ち出した。 俺が居なくなっても、何も無かったかのように正常稼動しているらしい。 「慶次、Dionは元気か?」 「あぁ…あの子は優遇実験されてたけど、近々ケースから出されるみたいだよ」 「へぇ…Dion見てみてぇな…」 「もう受け取り人が決まってるみたいだからね、紗奄みたいには連れ出せないよ」 微笑みながら昼食を摂る二人を小窓に見て、そんなこと解ってら…と呟いた。 俺はもうあの場所とは関係ない。 「あぁそうだ。成が心配してたよ?」 「なんて?」 「愛ちゃんに迷惑掛けてないかってさ」 「…馬鹿…言ってんなよ…」 ちょっと口調が弱くなった自分が悲しい。 やられた…。 「そーいや、Keyは?」 「Keyは元気よ?今までみたいに、やんちゃやってる」 あと聞いておく事は…。 「俺の後釜は?」 確か、減った分だけ人は追加される筈…。 俺が減ったんだから、誰か入ったと思うのだが…? 「あぁ、真田幸村って子が動物科から移ってきたよ」 「噂に聞いた“新棟設立”の動きか?」 「そうらしいよ。まぁ、BAKの俺にはそんなの関係無いけどね」 「へぇ、その試験実験がSion、Dion……Zionなんだろ?」 「そのDionの受取人が真田なんだよ」 「ふぅん…咬み付かれなきゃ良いがな」 多分、何にも聞かされないで入ってきたヒヨッコだろう。 どうせ…動物の遺伝子改良だとか新人類だとか聞かされる“無知人”だ。 あそこの実態なんて知らないまま…。 「真田ってヤツ、きっと此処に来るだろうな」 「なんで?」 「何と無くそう思った」 へぇ…そう…と、さっさと話を切り上げられた。 俺の“何と無く”はよくあることだから構わない。 「他には何かあるか?」 「鴉の飼い主が代わったみたいだよ」 そろそろ代わると思っていたが…。 時期的に少し早いな。 「北条、今の鴉の飼い主に暗殺されたって噂もあるんだよね」 「名前は?」 「松永久秀」 松永…もしかしたら愛をケースから出す前に見た奴かも知れない。 なんか厭な感じがした。 何考えてるか分からないというか…。 「白と黒の…」 「あれ、政宗知ってるの?」 やっぱり…。 あいつなのか…。 「慶次、早く帰ってDionとZionの様子見てこい!」 俺がアイツだったら、真っ先にあいつらを潰すだろう。 「わかった」 そう言って、彼は走って行った。
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