第三章 決闘とキスと再開と

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 ガヴリの役がルージュに変更され早くも一週間が経過した。早くて不可解な事が起こった一週間でもあった。  ダイドが入院したのだ。  話によると、リザリアの裏路地に住まう浮浪者に滅多打ちにされたらしい。現に全身に包帯を巻いているからその言葉は確かなんだろうが。  どこか腑に落ちない。  そもそもいくら油断していたからと言っても、魔法武芸者が一般人相手に後れをとるだろうか。  腕輪所持者で、尚且つランク付けでも上位に入るダイドが気を失うまで殴られ蹴られたりするだろうか。  おかしなことはこれだけではない。  アベルがその浮浪者たちを制裁しに行こうと思い、どこにいるんだと問いただしてもダイドは思い出せないの一点張り。医者の話だとショックで一時的に記憶を失っている可能性があるとのこと。  ーーなんなんだよ、これ。  アベルが退院した直後にダイドが入院。これは何か関係があるのか。また何かおかしな事が起こっているのか。  そう思うと、劇の練習にも身が入らずーー。 「アベルっち、ボケーってしてないで集中集中! 聖誕祭まであと一週間なんだからな!」  今日だけで何回目だろうか、怒鳴られるのも。最初は怒られる度に気が滅入っていたが今となってはあまり気にしなくなった。  いけない兆候だと気づいているが、どうすることもできないのだから仕方ない。
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