憶えていて

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部屋に帰った途端、空気が固まった。 ―――いつもなら勤務時間のはず… 仕事が早く片付いたのか、怪我でもしたのかは分からない。 ただ、彼はそこに居た。 「そやつは?」 「Third…え~と…」 「名はチカで決まりだな」 そう言うと、彼は想像に反してチカに話し掛けた。 まだ、忘れたには早い気もするが…。 もしかしたら全部溜め込むような人なのかも知れない。 「おぬし、珍しいな」 そんな声が聞こえて、振り返る。 振り返った先では元就がチカの裾を見ていた。 少し長いと思っていた服の丈だが、布の切れ目があって…。 「おぬしは男か?」 実験体のベースは女であり、男が居る筈は…無いのだが…。 …噂に聞いた男型実験体か…? なんか最近、また新たな実験をし始めたらしい。 また面倒臭いことを…。 「元就、お前が前に話してたヤツじゃねぇの?」 「74-TH…あぁそうだ」 首に引っ掛かっているタグを見てそう言った。 しっかし…なんでこんな珍しい奴が俺の所に…? 疑問を浮かべながらも、喉が渇いた俺は牛乳を取りにキッチンに向かった。
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