憶えていて

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「モトナリさん、ボクはユメをミました」 唐突に言われた台詞。 だからなんだ、という疑問詞。 不完全な感情が交わり、気持ち悪い。 「ボクはシりませんが、モトナリさんは“オオカミのミミをハやしたクロカミのオンナのコ”をシっていますか?」 「……知らぬな」 「D-036というナンバーのコです」 ナンバーを聞いた途端、元就の表情が微かに動く。 「そやつがどうした?」 「このヘヤのトナリのアきベヤに“サナダ”と“サルトビ”というフタリがハイります」 「それで…?」 「サナダにD-036はアズけられます」 断言された言葉は続けられ、空気の微振動が続く。 元就は何かに感づいたらしい。 表情を隠しはじめた。 「D-036は4ニン…いや3ニンのコどもをウみ、そのうちの1リをモトチカさんにアズけます」 「それは予言か?空言か?」 「イマのボクにはワかりません」 「何故そこまで分かっていて、区別がつかぬのだ?」 「それは、ボクにはミることがデキないミライですから」 微笑みながら放たれた言葉。 それが何を示すのか、彼は何を見たのか、俺にはさっぱり分からない。 まだ誰も居ない隣の部屋。 何があるのか分からない。 ナリの言ったこと、チカの言ったことは、どこかで合うのだろうか。
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