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浴室から出て、冷蔵庫から冷えたビールを取り出す。
それを持って、啓太の隣りに座り、顔を見る。
「寝てる…。」
いつものことだ。でも、ここで毛布を掛けて、寝かしたままにはしない。
翌日、すごく機嫌を悪くし、絡むのがめんどくさいからだ。
「座ったまま寝たから、身体いてー」
「カゼ引いたかも」
「一緒にビール飲みたかったのに…」
…
……
はぁ…、起こしてやるか。
「和泉、一緒に飲むんじゃなかったの?もう、寝るの?」
少し揺らしながら、声を掛ける。
「うーん…、なみちゃん…」
「寝るなら、布団敷くよー。」
「大丈夫…いつもより、風呂長くね?」
「…気のせいじゃない?それより、温くなるから飲みたいんだけど。」
「あっ!ごめん。」
軽く、互いの缶をぶつけた。
「あー、うまー。風呂上がりには染みるねっ。」
一気に、半分は飲み干した。
「ほんと、おっさんくせーな。」
「失礼な。まだ23歳の女性よ。それに、四捨五入だと、ハタチって知ってた?」
「知ってる。でも、飲み方はおっさんくさい。他のヤローだったら、引いてるぞ。」
「他の人の前では、してないもん。」
「そ。」
微笑みつつ、啓太は答えた。
“本当の自分”を簡単には見せてくれない伶子が、自分の前では見せてくれる。
本当は、クールな性格なんかじゃない。
それが分かれば、もっと男も寄ってくるだろう。
同性の友達も増えるだろう。
そしたら、俺の相手をしてくれなくなるか。
…ヤダな…。
と思い、「もっと他人に対して心を開けよ」なんて、絶対言わなかった。
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