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「は? ゴキブリ?」
なにこいつ。そんなもののために俺の前に裸晒してまで逃げて来たってわけ?
「あーはいはい任せとけ」
俺は新聞紙を筒状に巻いて洗面所に入り、ゴキブリを潰して回収し部屋に戻った。
「ほら、もう大丈夫だ」
俺がそう言ってゴキブリを包んだ新聞紙をゴミ箱に捨てると、杏奈はようやく安心したようにため息をつき、こいつにしては珍しく「ありがとう」とお礼を言った。
「それでな、杏奈」
「うむ。なんだ真之さん」
「目のやり場に困るんだが」
指摘すると杏奈はようやく自分が服を着ていないことに気付いたらしい。杏奈は顔を真っ赤にし、震えながら、先程の悲鳴に負けないほどの声で
「うあぁああああ!見るな!」
と叫び、俺の脇腹に鋭い正拳突きを浴びせた。
「ぐあ!! 痛ってえ!!」
俺が床で悶絶していると上から「見るなバカ!!」という声が聞こえ、洗面所のドアが強く閉まる音が響いた。
あいつが自分で出てきたんじゃねえか。
俺は床をのた打ち回りながらそう思った。
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