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風呂から上がり歯磨きを済まして部屋に戻ると、すでに杏奈は自分の布団を敷いてぐうぐうと眠っていた。
時計を確認するとまだ9時にもなっていなかったが俺も眠ることにして布団を敷き、先程と同じように仰向けに寝転がる。
そしてまた意味も無く天井を眺めた。
やはり俺はここが好きだ。
事故の後母方の田舎の祖父母に引き取られ、高校生になるまでそこに住んでいた。
『今日からここがあなたの家よ』
祖母は言った。
『お前はよくここに遊びに来たんだ』
祖父は言った。
祖父母は優しかったが、それゆえに俺には居心地が悪かった。
祖父母もその家も記憶を無くす前の俺を知っていたからだ。
俺は高校進学とともに祖父母の家を出た。その田舎に高校は無かったし、祖父母には悪いけど俺は一刻も早く家を出たかったからだ。
長い間ぼーっとしていてふと時計を見ると10時をいくらか回っていた。
寝よう。俺は電気を消し、悪夢の待ち構える夢の世界へ引き込まれていった。
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