第二話 紅嵐高校

15/15
419人が本棚に入れています
本棚に追加
/148ページ
風呂から上がり歯磨きを済まして部屋に戻ると、すでに杏奈は自分の布団を敷いてぐうぐうと眠っていた。 時計を確認するとまだ9時にもなっていなかったが俺も眠ることにして布団を敷き、先程と同じように仰向けに寝転がる。 そしてまた意味も無く天井を眺めた。 やはり俺はここが好きだ。 事故の後母方の田舎の祖父母に引き取られ、高校生になるまでそこに住んでいた。 『今日からここがあなたの家よ』 祖母は言った。 『お前はよくここに遊びに来たんだ』 祖父は言った。 祖父母は優しかったが、それゆえに俺には居心地が悪かった。 祖父母もその家も記憶を無くす前の俺を知っていたからだ。 俺は高校進学とともに祖父母の家を出た。その田舎に高校は無かったし、祖父母には悪いけど俺は一刻も早く家を出たかったからだ。 長い間ぼーっとしていてふと時計を見ると10時をいくらか回っていた。 寝よう。俺は電気を消し、悪夢の待ち構える夢の世界へ引き込まれていった。
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!