第一話 押しかけ少女

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春眠暁を覚えずという言葉を知っているだろうか。 古代中国の有名な詩人の言葉なので深い意味がありそうなのだがなんのことは無い。春は寝心地がよくてついうっかり寝過ごしちゃうよね。という意味だ。 さて滅多にならないチャイムの音で俺は夢から覚めた。 額の汗を袖で拭ってのっそり起き上がりおぼつかない足取りで玄関へと向かう。 せっかくの日曜だというのに、眠りから起こされることほどストレスの溜まることはない。 しかしまあチャイムがなったからには出ない訳にもいくまい。 どうせ新聞勧誘だろ?開けなくても分かるよ。 俺はやたらと軋むドアを開けた。 そしてドアが開ききる前に……「すみません。新聞なら間に合ってるんで」 どうだこの先制攻撃。後はドアを閉めるだけーって…… ん?女の子? そこにいたのはピンクのブラウスに赤いチェックのミニスカートを履いた少女だった。 「違う」 その来客の少女は見事なジト目で俺を見据え否定した。 新聞勧誘じゃないとすると……ああ、分かった。これしかない。 「すみません。宗教も間に合ってます」 しかし少女は 「違う」 え? 違う?それはおかしいな……この部屋への訪問者の7割は新聞勧誘。2割は宗教勧誘に占められているはずだ。 ちなみに残りの1割は隣の部屋のOLの山本さんが酔っ払って部屋を間違えてくるといったものだ。
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