scene.Ⅰ 憧れの代償

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「かなわないなぁ…ホント」 スッとグラスを手にとりゆっくりと一口し 「うん、なんかホッとするかも…」 はぁ… 暖かな店内でも、彼女の吐く息は僅かな白さを帯びた。 「それ、僕からのサービスです」 「え?ダメよ、そんなの」 「メニューにもないですし、なにより。使ったお酒、僕の自前ですから」 微笑みながらそう告げると 「…うん」 優しい声が耳に届く。 それを聞いて 「じゃあカズさん呼んできますから、少々お待ちを」 テーブル席を片付けていたジュンを呼び 「10分ぐらい抜けるかも。間に合わなかったらケータイ鳴らして?」 そう伝えカウンターから店内奥の事務所に向かった。
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