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コツコツ…
薄暗く細い通路の奥
Staff only
の表示の上から大きく×印。
こんなとこ従業員しか見ないし入らないだろ
マスターが言いながら油性ペンで×をし、その下にお世辞にも上手いとは言えない歪んだ文字で
事務所
そう書かれたドア。
コンコン
二回ノックし開くと
「…すー、すー…」
ホールより少し高めに設定された空調の生暖かい空気とともに届いた寝息。
入り口右側のスイッチをパチッと入れながら
「脱がなきゃ寝れないんですか?」
「うぁ…ん……まぶしっ…」
黒の細身のスラックス、上半身は裸でソファに横たわる大きな体が寝返りを打った。
「営業中ですよ、カズさんのお店でしょ?」
言いながら隅の棚から電気シェーバーとヘアムースを取る。
「…俺いなくても回るし」
まったく
寝起きは本当に子供なんだから。
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