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「…でね?結局その後…」
白く細い指で小さなグラスを燻(くゆ)らせながら、カウンターの向かいでこの一時を心から楽しむ
そんな様子のお客様を見る時
この仕事について、本当に良かったと心底思う
なんて
嘘ばかり。
「ねぇ、コウちゃん聞いてる?」
カチャカチャとグラスを洗いながら、フッと小さく鼻で笑い
「えぇ、もちろんですよ。それはとんだ週末でしたね」
「そーなのよっ!ドタキャンよ、アイツ?これで何度目なの!」
目くじらをたて御立腹の様子だ。
「絶対浮気してる、もう絶対よ!あーホント頭にくる…」
手を止めずに話を聞きながら、思わずクスッと笑ってしまった僕の声を彼女は聞き逃さなかった。
「あ…今、笑ったでしょ?」
「いや、すいません」
ニッコリと微笑み、そう返し
「なんだかあまりにも無邪気でストレートで…ついかわいいなって」
彼女のムッとした表情が、一瞬緩んだように見えたのは
きっと気のせいなんかじゃない。
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