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自分の気持ちに蓋をする。
そんな醜くも純粋な本心たちがこの場に相応しくないのは、自分で良く分かっている。
心地よく流れるシックなジャズは、優しくも力強い低音がドア一枚挟んで反対にあるはずの外界を遮断し
ボンヤリと明るすぎない間接照明が写し出す木目調で統一されたクラシックな店内は、そのままこの店ごと別の世界へ誘う。
一時の大人な夢の世界へ
ここでは誰しもが紳士、淑女に早変わり
「あのね?…この前言いそびれたんだけど…」
棚にグラスをしまいながら、首だけ捻って
なんです?
そう返すと
「…コウ、すっごく上手だった」
照明のせいか、お酒のせいか
そう言う彼女の頬が赤らんでいた。
「リードが上手でしたからね、フフッ。面と向かっては照れますね」
俗なやり取りすらも、ここでは魔法にかかるのだ。
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