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「さあさあ、遠慮しなくてもいい。今日から君は晴れて自由の身だ。そして君は今時珍しい居候という肩書を得てしまった訳だが、ここまでで質問や感想はあるかい?
なかったならば、僕は話を続けて明日の君の予定を組みたいんだけどいいかな?」
話の流れが読めないままこんな汚くて狭い部屋に住む羽目になるとは、厭だ。厭すぎる。
「何と言いますか……いえ、この場合はっきりと言います。
もっといい物件はなかったのですか?正直、結婚相手でもない殿方と一緒の部屋というのは乙女には酷だと思います。」
彼はびっくりしたような顔をして、書類や置物の猫、食べ散らかしたお弁当が乗ったソファーを片づけを中断した。
「え、君は処女なの?その年で?いやー想定外の出来事にびっくりだよ。」
あまりの事に声が出ない、なんて無神経、なんて不躾な男なんだ。
怒りの色が見えたのか、彼はハットを深く被りなおして加えた煙草をポケットに直した。
「失礼、とりあえずソファーに座ってください。僕はコーヒーが好きなんだけど、君は何か飲むかい?」
黒葛原さんはソファーの荷物を退かせてキッチンに運ぶ。
「じゃあ…アッサムをもらえますか?砂糖はブラウンでお願いします。」
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