哀歓世界

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「――……もう目は完治したので、君は今日で退院になる。1ヶ月の入院も今日で終わりだ」 一時的に書類を書くことを止め、年配の医者は椅子の向きを変え、ユイに笑顔を向ける。 「手術が成功して良かった。君の目に変わったことがあった時は、また私のところへ来なさい」 「ありがとうございました」 その医者に軽くお辞儀をしたユイは病室を出て、そのままその病室の扉に寄りかかる。 そしてユイはゆっくり、そっと右目の上に張られたハート柄の眼帯に触れる。 「私の目……か……」 ユイはその瞳を眼帯の上から優しくさすりながら、病院をあとにする。 両親には真っ直ぐ家に帰るように言われていたが、寄り道をすることをユイは決めていた。 久々に病院の外に出たユイは、青く澄み渡る空が続く夏空の下を駆け足した。
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